土を耕し、命を繋ぐ。ラックファームが北井上で描く「循環する酪農」の理想郷

徳島市北井上で酪農を営む「ラックファーム」の筒井さんのもとを訪ねました。私自身、学生時代にホームステイ先で「牛のお産」に立ち会ったことが食の原点となっており、酪農には人一倍強い思い入れがあります。365日休みなく牛と向き合い、徳島の土を耕し続ける筒井さんの情熱に、私自ら迫ってきました。
365日、15時間の献身。命の責任を背負う覚悟
酪農の現場は、想像以上に過酷です。朝晩の搾乳を含め、1日の労働時間は14〜15時間に及び、休みは365日ありません。
「牛はお産をさせなければ乳が出ない『経済動物』。だからこそ、私たちは彼らの命に最後まで責任を持たなければならない」
23歳でこの道に入り、お母様の逝去を機に酪農専業となった筒井さんの言葉には、積み重ねてきた歳月の重みがありました。現在は三代目の息子さんも就農され、家族一丸となって徳島の酪農の灯を守り続けています。その徹底された「整理整頓・清掃・清潔」な牛舎環境には、経営者として私も深く襟を正す思いでした。
四国初の快挙。「積年良土」が作る季節の味

筒井さんのミルクを一口飲んで驚くのは、その質の高さです。筒井さんの持論は「飼料イコール、乳に季節の味が出る」ということ。その美味しさの源泉は、筒井さんが掲げる「積年良土(せきねんりょうど)」、つまり「歳月をかけて良い土を作る」という精神にありました。
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循環の輪:牛の堆肥を畑へ戻し、肥沃な土を作る。そこで育った豊かな草を牛が食べ、また堆肥となる。
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地場の力を活かす:北井上の肥沃な土地を活用し、一年中青い草を育てる。
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広大な管理:45ヘクタールもの土地(耕作放棄地など)を管理し、自ら機械を改良して効率的な草作りを追求。
この「徳島の土とエサで育てる」飽くなき挑戦は、第12回全国自給飼料生産コンクールにて、四国初となる「農林水産省畜産局長賞」を受賞するという快挙を成し遂げました。
牛舎には、希少な遺伝子を持つ「レッド(赤白)」の牛や、お腹に優しいとされる「A2牛乳」を出す牛の姿もあり、筒井さんが「人の縁」を大切にしながら、常に新しい可能性に挑戦されていることが伝わってきました。
衰退する業界への危機感と、開かれた未来への想い

かつて徳島に400軒あった酪農家は、現在わずか60軒まで減少しています。
「儲からない構造を変えなければ、この産業は守れない」
筒井さんは自らスペイン製の最新機械を導入して効率化を図り、行政へ働きかけ、食農教育を通じて農業への偏見をなくそうと闘っています。「自分たちは牛の世話で精一杯。だからこそ、この産業の魅力を活かせる人が事業にして、徳島を広めてくれればいい」という開かれた姿勢に、私は徳島の未来を担うリーダーとしての頼もしさを感じました。
取材を終えて。筒井さんから届いた「徳島の息吹」

今回の取材から数日後、筒井さんから私のスマートフォンにいくつかの写真が届きました。
そこには、プロフェッショナルが心動かされる、酪農の現場の「美しさ」と「喜び」が写っていました。「養分最高」という言葉に込められた、牛の健康とミルクの質を第一に考える誇り。
生産者がこれほどまでに感動しながら向き合っている素材だからこそ、私たちは自信を持ってお客様にお届けできる。そう確信した瞬間でした。
徳島の「宝」を次世代へ。物語は鳴門のチーズ職人へ繋がります
筒井さんが耕した「土」から生まれた、この素晴らしいミルク。 今年から本格始動する私たちの「食農プロジェクト」は、このバトンを次の場所へと繋ぎます。
次回は、このラックファームの牛乳を使い、究極のチーズを作り上げている鳴門市の「チーズの灯(あかり)」さんを訪ねます。徳島の素材が、どのような職人の手によって昇華されるのか。
物語の続きを、どうぞお楽しみにお待ちください。
(文責:イルローザ社長 岡田)
