命のミルクを究極の形に。鳴門「チーズの灯」が紡ぐ、徳島産チーズの夜明け
徳島の一次産品をお菓子屋の目利きでご紹介する「とくしま yell プロジェクト」。
イルローザは、お菓子を通して徳島の魅力をお客様にお届けしたいと考えています。私たちが本当にお伝えしたいのは、徳島の素晴らしい素材そのものだけでなく、その裏側にある「生産者さんの想い」です。このブログでは、お菓子屋として徳島に根差し、地域と密接に関わる私たちが、徳島で情熱をもってものづくりをされている方々をご紹介していきます。
前回ご紹介した、徳島市北井上の酪農家、ラックファームの筒井さんが「積年良土」の精神で生み出す最高のミルク。この命のバトンを繋ぐため、鳴門市にあるチーズ工房「チーズの灯(あかり)」の職人、清見さんのもとを訪ねました。
筒井さんのミルクが、清見さんの手によってどのような唯一無二のチーズへと昇華するのか、私自らその現場に立ち会ってきました!
お菓子屋の原点、そして「エール」を送り合う関係へ
実は、今年でイルローザという屋号でお菓子屋を始めて40周年になります。この40年の間には本当に様々な変化があり、直近では店舗中心の形態から製造卸へと大きく舵を切る決断もありました。
その激動の中で、私たちが一貫して軸に据えてきたのが、徳島の地元の素材を活かしたお菓子作りです。気づけば、マンマローザに使う牛乳をはじめ、いちごや様々なフルーツなど、年中を通して徳島の豊かな恵みにずっと助けられ、エールを送られ続けてきた40年でした。
だからこそ、お互いにエールを送り合えるような循環を作りたい。その強い想いから、今回のプロジェクトが動き出したのです。
北海道での4年間。そして徳島でチーズを作る意味
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鳴門の地で素晴らしいチーズを醸す清見さんですが、その技術の原点は北海道にあります。
テレビのドキュメンタリーでチーズ職人の姿を見た清見さんは、単身北海道へ渡り、障害を持つ方々とも共に自給自足の生活を営む「共働学舎」の門を叩きました。そこで4年間、チーズ作りと酪農の基礎を徹底的に学ばれたのです。
地元である徳島に戻り、チーズ工房を開いた清見さん。しかし、北海道と徳島では気候も環境も、そして牛の品種も全く異なります。
「北海道と同じものは作れない。だからこそ、この徳島のミルクの良さを活かして、ここでしか作れない最高のものを作る」
その言葉通り、清見さんはラックファームさんから20リットルのバケツで直接ミルクを運び込み、徳島の風土に合わせたチーズ作りに日々挑まれています。
職人の手の感覚が命。驚くべき手仕事の現場

清見さんの工房を見学させていただいて驚いたのは、その徹底的な「手仕事」の割合の多さです。
工房内にある機械といえば、冷蔵庫や最低限のパステライザー(殺菌機)くらいで、作業のほとんどが清見さんお一人の手によって行われています。
チーズ作りはまさに科学であり、同時に研ぎ澄まされた職人の感覚の世界です。生乳に含まれる酵素や乳酸菌の働き、凝固酵素を入れてから固まるまでのわずかな時間の変化を、清見さんはじっと見極めます。「この固まり具合なら、次の工程はこの時間でいこう」と、ミルクの状態に合わせてすべての作業時間を1分単位で組み立てていくのです。
特に、青草が豊富になる11月から5月にかけてのミルクで作るチーズは、格別の味わいになると言います。
「青草の時期のミルクは、それだけでチーズが美味しくなる。職人の技術がいらないくらい、素材そのものに力があるんです」
そう笑う清見さんですが、その素材の力を100パーセント引き出せるのは、毎日の微調整を怠らない清見さんの確かな腕があってこそだと確信しました。
徳島の地名が刻まれた、世界に誇るチーズたち
清見さんが生み出すチーズには、徳島の美しい川や橋、土地の名前がひらがなで優しく名付けられています。
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しらさぎ(山羊乳などの特徴を活かした酸凝固タイプ。共働学舎の伝統をベースにしています)
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よしの(フロマージュブランをベースに、お砂糖と生クリームを加えたふわふわのデザートチーズ)
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むや(もともとは別の名前にする予定が、委託元の女性の強い希望で名付けられた、カマンベールを思わせる風味豊かなチーズ)
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なだ(とろりと溶かして美味しい、ラクレットタイプ)
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あわ(生乳に生クリームを加えた、リッチで濃厚な味わいのチーズ)
どれも徳島の風土と、筒井さんの命のミルク、そして清見さんの情熱が結晶となった、言葉にできないほどの美味しさです。
実は、清見さんの「むや」は、フランスの伝統的なチーズのコンクール「モフ」の日本版(セレクション・ジャポン)の白カビ・ソフト部門で見事に金賞を受賞されています。
全国の並み居る強豪、それこそ酪農の本場である北海道のチーズたちを抑えての金賞受賞は、四国の、そして徳島のポテンシャルの高さを全国に証明してくれました。
徳島と、人々と、ともに。物語は次代の若者たちへ
清見さんは、ご自身の工房でチーズを作るだけでなく、地域の大学(徳島大学生物資源産業学部)の学生たちへの乳加工実習の指導など、食農教育にも力を注がれています。
「今の酪農や農業の現場をそのまま見ると、しんどい、儲からないというイメージが先行して、未来が見えにくくなっている。でも、こうしてミルクから新しい価値(チーズ)が生まれる姿を見せることで、若い人たちが『やってみたい』と思える未来の選択肢を作りたい」
この清見さんの熱い想いに、私は深く共感しました。
イルローザもまた、この徳島の地で長くお菓子を作らせていただいてきました。だからこそ、筒井さんが耕した土から生まれ、清見さんが磨き上げたこの最高のチーズを、お菓子屋のフィルターを通して、もっと多くのお客様に、そして次の世代へと届けていく責任があると感じています。
【限定20箱】徳島の奇跡が詰まったチーズセットを、イルローザオンラインショップで!
今回取材させていただいた「チーズの灯」さんの特製チーズ詰め合わせを、イルローザオンラインショップにて限定20セットで販売を予定しております。
清見さんがお一人で手作りされているため、一度に多くをお届けすることはできませんが、職人の魂がこもった本物の味を、ぜひ皆様のご家庭でお楽しみください。
商品ページはこちらから!
(文責:イルローザ社長 岡田)
